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個人事業か法人成りか (後編) * 税金面の比較 [仕事]

<前編より続く>  

ところが、会社法が施行され
取締役が1人でも可能になるなど
法人設立を容易にした結果、
個人事業と変わらない法人が
設立できるようになりました。
それにもかかわらず
給与所得控除を認めると
個人事業とで差が生じてしまいます。
そこで税制が改正されました。
「特殊支配同族会社の
業務主宰役員給与の損金不算入」
という制度です。
実質的に1人と変わらない会社では、
オーナー役員の給与所得控除相当分の
金額を損金の額に算入しないと
されました。
法人の段階で給与を損金算入し、
個人でも給与所得控除を受けるのは、
経費の二重控除となるという理由です。
前編の例では、
給与所得控除相当額220万円を
法人で損金に認めないというものです。
その結果は、どうなったのでしょうか。
 
*法人事業の場合* (単位:千円)
収  入 15,000
経  費                  △    5,000
給  料                  △  10,000
給与所得控除分 2,200
法人所得(利益) 2,200 ⅴ(ⅰ-ⅱ-ⅲ+ⅳ)
法人税等(税金) 750 ⅵ(ⅴ×税率)
(会社の税金)
給  料 10,000
給与所得控除後 7,800
所得税等(税金) 1,942 ⅷ(ⅶ×税率)
(個人の税金)
税 金 合 計 2,692 ⅸ(ⅵ+ⅷ)
個人事業との差額                      △   431 ⅹ(ⅸ-D)

改正前に111万円あった個人事業との差が
このケースでは43万円に減少しました。
このように、給与所得控除相当額を損金
として認められなくなった結果、
従来のように大きく有利ということは
なくなりました。


ただ、先程
"「特殊支配同族会社の業務主宰役員給与
の損金不算入」という制度で
実質的に1人と変わらない会社では、
オーナー役員の給与所得控除相当分の
金額を損金の額に算入されません。"
と書きました。
この制度は、オーナー役員などの
持株や役員割合、所得金額など
要件によって適用されるかが
決まります。

http://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5207.htm


その要件に該当されなければ
「損金不算入」は適用されず
給与所得控除が使えますので
該当されないようにすることが
重要となります。
このように、条件によっては
法人成りがかなり有利となります。

ところで、
これまで税金面だけを
みてきましたが、
法人成りを検討するには
「なぜ法人成りするのか」という観点が
一番重要であるのはいうまでも
ありません。
さらに、
法人成りすると
・設立や役員変更等の登記が必要
・取締役会議事録等の作成が必要
・社会保険に強制加入
などが違ってきます。
これは、個人と(法人)組織という
違いであり、
法人の場合、形式的であったとしても
組織形態が必要となります。
また、
・経理処理や税務申告が複雑となる
・交際費の損金算入に一定の限度額
・赤字であっても最低7万円の税金が
 かかる
・税務調査も増える
などもあり
安易に法人成りを考えるべきでは
ありません。
それなりに大変な手続きや処理、
しっかりとした帳簿等も要求されます。
会社と個人の区別をするなど
個人の時とは考え方を変える
必要があります。
先程の例も、個人の所得を全て
法人で給料にするという設定ですが、
実際には無理があります。
給料の金額によっては「高額」と
認定されたり、所得も毎期変動します。
所得によって毎期のように給料を
変えるのは難しく、個人事業のように
あるお金を自由に使えるわけでは
ありません。
所得がいくらで、そこから給料として
どの程度だせるのか。
高額な社会保険まで考慮にいれると
一概にどちらが有利かは難しい問題です。
税金面以外でのメリット・デメリットを
十分に把握したうえで決定すべきです。
法人成りとは
個人を「組織化」することであり、
個人から法人へという
イメージ、意識ができるかが
ポイントではないでしょうか。



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