個人事業か法人成りか (前編) * 税金面の比較 [仕事]
H18年5月1日に施行された会社法は、 |
・ 最低資本金制度の廃止 |
・ 取締役が1人でも可能 |
・ 設立手続きの簡素化、など |
会社設立や運営のハードルを低くして |
起業を促進しています。 |
個人事業を法人にするメリットとして |
・ 対外的信用のアップ |
・ 金融機関からの融資が受けやすい |
などがありますが、税金面でも有利と |
いわれることが多いようです。 |
今回は、 |
個人事業者が法人成りし |
法人から給料を貰った場合、 |
税金面でどの程度 |
メリットがあるのか |
個人事業・法人事業の違いは |
■どのような税金が課されるか |
●その税金の税率の構造はどうか |
です。 |
■どのような税金か・・・ |
個人事業の場合、利益(所得)に対して |
所得税、個人住民税、事業税 |
が課税され、 |
法人の場合には、 |
法人税、法人住民税・事業税 |
の他、給料を貰うことにより |
所得税や住民税も課されます。 |
●税率の構造・・・ |
所得税の税率は、 |
所得が多くなると税率が高くなる |
累進課税であり、所得により |
5%から40%の税率となります。 |
法人税の税率は、所得のうち |
800万円以下の部分に22% |
800万円を超える部分に30% |
という2段階の税率となっています |
(資本金1億円以下の会社の場合)。 |
そのため、所得がいくらかによって |
どちらが有利か、となりますが、 |
では、個人の所得を |
収入(15,000千円)、経費(5,000千円) |
利益が10,000千円のケースで |
比較してみます。 |
※個人事業者が、 |
資本金1,000万円以下 従業員数50人以下の会社を設立し、 |
会社より給料を貰うという前提。 |
消費税や所得控除は考慮していません。 |
*個人事業の場合* | (単位:千円) | |
収 入 | 15,000 | A |
経 費 | △ 5,000 | B |
個人所得(利益) | 10,000 | C(A-B) |
所得税等(税金) | 3,123 | D(C×税率) |
となります。ここで、 |
個人所得(C)を全て法人で 給料として貰い(③) |
法人の所得(④)を0にしたとすると、 |
*法人事業の場合* | (単位:千円) | |
収 入 | 15,000 | ① |
経 費 | △ 5,000 | ② |
給 料 | △10,000 | ③ |
法人所得(利益) | 0 | ④(①-②-③) |
法人税等(税金) | 70 | ⑤(④×税率) |
(会社の税金) | ||
給 料 | 10,000 | ③ |
給与所得控除後 | 7,800 | ⑥ |
所得税等(税金) | 1,942 | ⑦(⑥×税率) |
(個人の税金) | ||
税 金 合 計 | 2,012 | ⑧(⑤+⑦) |
個人事業との差額 | △ 1,111 | ⑨(⑧-D) |
法人税等(⑤)では、 |
赤字でも7万円の税金が発生しますが、 |
給料に対する所得税等(⑦)が大幅に |
減少するため、 |
合算しても(⑧)個人事業の場合の |
税金(D)に比べて111万円も |
有利になります(⑨)。 |
この違いは、なぜ発生するのでしょうか。 |
その理由は次の表にあります。 |
給与等の金額 | 割 合 | 控除額 |
660万~1千万未満 | 90 % | 120万 |
1千万以上 | 95 % | 170万 |
これは、給与所得の金額を計算する表で |
660万円以上の給料の場合の計算式 |
例えば、給与等の金額が |
1,000万円の場合は、 |
1,000万円×95%-170万円=780万円が |
所得となります。 |
そして、給与所得者の場合は、 |
給与所得控除後の780万円に |
税金が課されるのに対し(上記の⑥)、 |
個人事業者の場合には、 |
個人所得の1,000万円に対して |
課税されます(上記のC)。 |
(個人の)所得の種類が |
事業所得(個人事業)から |
給与所得(法人より給料)に |
変わることがポイントとなります。 |
所得が変わり計算方法も変わったため |
法人成りにして(個人の所得を) |
給料にするだけで、1,000万の所得が |
なんと780万にしてもらえるのです。 |
この差額220万円が給与所得控除相当額 |
といわれ給与所得者の経費と |
みなされます。 |
差額220万円分の所得税・住民税の |
税率が上記Dと⑦の違いとなってきます。 |
給与所得控除を利用することが |
いかに有利かが分かります。 |
法人成りすると"税金面で有利" |
とは、まさにこのことでした。 |
<後編に続く>