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LLP・LLCと株式会社 [仕事]

平成17年から18年にかけて
新規の創業や共同事業の促進という観点から、
2 つの制度が創設されています。

それは
■LLP ( Limited Liability Partnership )
■LLC ( Limited Liability Company )
という制度で、
今回はこの2 つの制度について解説していきます。


LLP(有限責任事業組合)とは、
民法組合の特例として
「有限責任事業組合契約に関する法律」に基づき
設立される組合であり、
LLC(合同会社)とは、
株式会社や合名・合資会社とともに
「会社法」に基づき設立できる会社形態の一つとして、
今回新設された法人です。


株式会社と各制度の違いは次のようになります。

       L L P     L  L  C    株式会社
  法   人   格   な   し      あ     り
 構 成 員 の 責 任    有     限     責     任
 内部自治  機  関    取締役会等の機関の設置は任意    必  要
     損益の分配  損益は取り決めで自由に分配できる    出資比率
  課 税 方 法   構成員に課税     法 人 に 課 税



【2つの制度の違い】
この2 つの制度の最も大きな違いは、
LLC が会社法上の「法人」であり「法人格がある」のに対して、
LLP は「組合」であり、「法人格がない」という点です。
この「法人格」の有無により、
法人格があるLLC は「法人に課税」され
法人格がないLLP は「構成員に課税」されます。

【LLP のメリット】
「構成員に課税」されるということがLLP の最大のメリットで、
「法人に課税」の場合、利益が法人で課税されたうえ
出資者への利益分配にも課税されるという
2 重課税が生じてしまいます。
「構成員に課税」の場合、LLP の利益は、
LLP に課税されず、出資者が取り決めた比率で各自に割り振られ、
それぞれの所得(所得税や法人税)として課税されます。
LLP が赤字の場合には、割り振られた損失を、出資金を限度として、
それぞれの所得から差し引くことができるというメリットがあります。

その他には
●取締役会などの機関の設置も任意と
会社運営の自由度が高い。
●出資と損益の分配を自由に取り決めできる。
例えば、大学教授は知識を(出資は10%)、
大企業は資金を(出資は90%)提供し、共同事業を。
損益の分配は、大学教授40%、大企業60%にということもできる。
などがあります。


【LLP のデメリット】
反面、許認可事業や銀行取引など「法人格」が重視される場合では、
株式会社かLLC という選択になると思われます。

その他のデメリットとして、
●事業が成功しても株式会社に組織変更することができない。
その場合には、組合を解散し、利益の分配をしてから
株式会社を設立しなければなりません。
●組合の存続期間を契約書に記載する必要がある。
そのため、期間を限定して事業を行うことになります。
●対外的な信用がない。
などがあります。


【LLC のメリット・デメリット】
LLC は、株式会社と比較した場合、
●株主総会の開催などが不要なため、
より迅速な意思決定ができる。
●取締役会などの機関の設置も任意と
会社運営の自由度が高い。
●出資と損益の分配を自由に取り決めできる。

反面
●多くの出資者を予定しているものではなく、
小規模企業に適した形態と思われます。
●対外的な信用がない。
などがあります。
なおLLC は、株式会社への組織変更は認められています。


以上をまとめて比較すると

       L L P    L  L  C    株式会社
   法人格の有無   無・課税のメリット  有・「法人格」が重視される場合
 内部自治  機  関  任意・迅速な意思決定ができる 必要・迅速でない
     損益の分配  自由・貢献度に応じて分配などが可   出資比率のみ
 デ メ リ ッ ト    対 外 的 な 信 用 が な い  
 適 し た 形 態   期 間 限 定   小規模企業  


2 つの制度はともに
会社運営の自由度が高く、共同事業、
少人数
に適した形態で、
LLP は、構成員課税が、
LLC は、「法人格」が必要な場合に、
さらに成長後に株式会社への組織変更もできる点が
メリットになると思われます。


なお経済産業省によると
■平成17 年8 月1 日に施行されたLLP の設立件数は
平成18年12月末で約1,600 件。
設立状況は
●業種は、サービス業が70%を占めている。
●組合員数は、5 人以下が80%。
●存続年数は、10 年未満が50%、最も多いのが10~14 年で
約30%となっています。

この数字からも
●少人数
●共同事業
●期間限定
という LLPの特徴が見てとれます。


http://www.meti.go.jp/policy/economic_oganization/pdf/llp_setsuritsu-jyoukyou.pdf